【レンズレビュー】「TOKINA AT-X 16-28 F2.8 PRO FX」[第5回]

雪がやっと溶けたと思うと、釧路の春はあっという間に終わってしまう。というか、いつからいつまでが春なのかはっきりしない。15℃を超えたかと思ったら次の日には10℃を下回ったりするからである。おまけにちっとも晴れない。1週間のうち5日は曇りか雨なんじゃないかという気がする。しかも毎朝霧。というわけで釧路の春はどんよりしており、なかなか撮影日和とはいかない。

 

そんなことは傍に置いておいて、今回登場するのは…

f:id:shogaitabibito:20240506152939j:imageTOKINA AT-X 16-28 F2.8 PRO FX

 

である。純正以外のレンズは初のご紹介。超広角ズーム導入にあたり、2023年夏に中古で購入したサードパーティ製レンズになる。2010年発売のレンズで、驚くことに発売からもう14年も前(そして後継も出ている)になるのだが、小生の手持ちの中では(残念ながら?)最も新しい玉になる。某密林で35,000円で購入した。

トキナー(というのはレンズ銘だけで、今では社名が「ケンコー・トキナー」になりましたね…)は新品も安いのだが、中古相場は何故かリセールが良くなく、さらに値落ちするので、貧困フォトグラフィー勢にも導入しやすい。ヤフオクトキナーレンズを検索すると安すぎてビックリするよ。そのうち何本か叩き売りのものを買ってみようかと思う。

 

Fマウントで超広角ズームを導入するにあたっては、実は意外と色んな選択肢がある。明るさだなんだとこだわることのできるポイントは色々あるものの、一応トキナー以外になると、f/2.8通しなら以下のレンズが候補に上がると思う。

  • AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(純正)
  • SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM
  • TAMRON A041(か、1世代前のA012

この辺りになるだろうか。また、f/2.8通しに拘らなければ、

価格.comで漁った限りではこれくらいかね。f/2.8通しは軒並み出目金なので、フィルター装着を前提にするなら明るさを犠牲にするしかない。これ以外に旧製品もあるので、一応純正の古いのも上げておくと、

  • Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED

なんてのもある。

f/2.8通しで検討すると、純正とSIGMAはワイド端14mmから、TAMRONは15mmから使えるものの、やはり大三元(相当)だけあって中古品でもお値段がそこそこ張ってしまうところである。中古最安値ラインで17-35/2.8Dが4万弱、タムロンA012で4.5万というところか(5月上旬現在、価格.comにて)。この2つは型落ちだし、あとはもう中古でも軒並み5桁後半〜6桁ですわ。

特に純正の大三元(14-24/2.8G)は、新品で買うと25万〜だそうだ。勿論超広角域における1mmの差が大きいのは百も承知ではあるものの、とてもではないが小生に手が届くシロモノではない。現行SIGMA14-24/2.8の新品も13万〜だそうだ。もし血迷って買ってしまったら、生活が立ちいかなくなってしまいそうである。

そこで本レンズ、TOKINA AT-X 16-28/2.8である。一応旧モデルではあるが、他の超広角大三元相当レンズに比べると、違法労働を疑ってしまうほどお安く求めることができる。2010年代以降の同クラス製品ではこれが一番相場が安かった。状態が良いものでも3万後半くらいから探せそうである。ちなみに新品でも6.8万からまだ在庫があった。

勿論ワイド端は他メーカーには敵わず16mmからではあるが、多分アマチュアの域を出ないのであればこれで十分すぎるほど事足りる。使用してみて、ワイド端16mmであれば日常使いでもギリギリ使える範疇、テレ端が28mmまであることも相まって結果的に出番が増えるのではないかと感じた。超広角f2.8通しズームを手軽に手に入れるとするならば、良い選択肢になりうる。

なお、繰り返しになるがAT-X16-28/2.8は旧製品になるので、もし公式から新品で購入検討する場合は後継のopera 16-28mm F2.8 FFを選ぶこととなる。一応性能はアップしているとどこかで見た。リセール?そんなものは知らない。

 

外観

f:id:shogaitabibito:20240506153913j:imageトキナーのフラッグシップモデルらしく金銘板。さらに金帯が入る。なんだかGタイプ以降のニッコールっぽい。ズーム回転方向がニコンと同じなので、ニコンユーザーにとっては扱いやすい。逆回転でも慣れるんだろうけど、なんとなく他メーカーを敬遠してしまうのはその辺りの事情もある。無論、一番は財力の問題なのだが。全体的に高級感のあるマット仕上げになっている。

f:id:shogaitabibito:20240506154200j:imageシリアルナンバーは裏面。ズームリングは固め。ちなみになんだが、トキナーレンズのシリアルナンバーから製造時期を割り出す手段やサイトを知っている方がもしいたらコッソリ小生までおしえてください。

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f:id:shogaitabibito:20240506154332j:imageトキナーお得意のフォーカスクラッチ機構というやつ。これはワンタッチなのでピントリングを後玉側にグッとやるとMFに切り替えられる。ボディ側の操作は不要。操作感も結構しっかりしていて個人的に好感度は高め。そもそもが安価なので、フルタイムMFまで求めるのは酷だよねぇ。少なくともDタイプニッコールによく付いている脆いM/A切替リングより100倍マシだ。ピントリングのトルクもAF全盛期のレンズにしてはしっかりしている方だな。MFでも使える範疇。

f:id:shogaitabibito:20240506154546j:image後玉側から。9枚羽。流石にトキナーのフラッグシップモデル相当なので、しっかり金属マウントである。あ、言い忘れていたが絞りリングはない。

f:id:shogaitabibito:20240506154604j:image見ての通りの出目金レンズである。念の為述べておくが、フィルター装着は不可である。フードが一体になっているので比較的安全ではあるが、取扱いには注意。ズームしても全長は変わらないので、フードからははみ出さないが、前玉はワイド端16mmで最も繰り出してくるので、持ち運ぶ時はテレ端28mmにセットすると安心できる。ちなみにインナーフォーカスになっている。

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f:id:shogaitabibito:20240506154908j:imageD750に装着。本レンズはほぼ1kgなので、合わせて2kg近くになる。デカい、長い、重い。カメラに詳しくない人が見たらビックリしそうである。迫力は抜群だが、片手で支えていると腕がプルプルしてくる。もう少しデカいボディの方が似合うかもなあ。となるとD850か一桁機になってしまうな。

f:id:shogaitabibito:20240506155246j:imageこれだけ前玉がデカいので、キャップもデカい。嵌めやすくて取れにくいのでいいキャップだと思う。撮る時にどこにしまおうか迷うくらいの大きさだが、安全性重視のため、致し方なしである。

 

作例

約10ヶ月ほど北海道各地で撮影した作例をご紹介。

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買ったばかりの頃の1枚。初の超広角は、縦横奥行き共に言葉にできないほどの今までにない広がりがあって最高だ(書いておいてなんだが、当たり前のことを言ってるな)。トキナー持ち味のブルーの美しさは勿論の事ながら、その他のカラーも犠牲になる事なくバランスよく表現している。

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列車待ち中にテストしたもの。空のブルーが美しい。あまりデカく拡大してしまうとちょっと厳しいが、開放からまあまあ頑張っている。(現代のレンズとしては)解像度はそれなりで、コントラスト重視なのかな。そんな感じがする。暗部まで描写できている。

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H100のテールライトと天井の蛍光灯でこれなので、ハイビームが来たらどうなるかは想像に難くない。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 24mm 1/30秒 f/5.6 ISO200
  • 北海道深川市 ラ・カンパーニュホテル深川

最短撮影距離0.28mが効いて、テーブルフォトまでこなせる。もう少し絞れば良かったな。

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室内をダイナミックに、明るく広く写せるのはいい。パースの狂いも気にならない。

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さて、トキナーレンズ恒例の問題となる、逆光シチュエーションである。f/5.6まで絞ったがご覧の通り盛大なフレア&ゴーストである。フレアな部分はコントラスト低下。そしてゴーストはきたない。基本的に太陽に向かって撮るのはやめた方が吉である。少なくとも小生にはこれを逆手に取るようなスキルはない。

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花咲線減速運転の車内から無理やりテレ端開放で撮ったので、色々無理があるのは勘弁してほしい。やや周辺光量落ちあり。なんとなくフワフワしてるというか、ピント面がピンボケしてるわけではないがイマイチよくわからない…それがトキナーらしいと言えばそうなのかもしれないが、かなり好みは分かれる気がする。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 16mm 1/800秒 f/2.8 ISO100
  • 北海道豊頃町 はるにれの木

縦構図も。これは後から編集で地上のシャドウを持ち上げたのだが、「どうして全部開放で撮ってしまったんだろう…」と後悔している撮影だ(笑)。かなり拡大すると枝の細部がなんだかモヤモヤしているのがわかると思う。ただ、空の色のグラデーションの鮮やかさは見事だと思う。空と雲の表現は手持ちの中で一番好きだな。はるにれの木はもう一度リベンジしに行きたい。冬でも3時には起きないと間に合わないな(笑)。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 16mm 1/800秒 f/2.8 ISO100
  • 北海道豊頃町 豊頃駅 2541D

無謀にも真正面に太陽を入れた一枚。太陽はもはや原型をとどめていないが、個人的に使ってみての印象としては、斜めから光を入射させるよりかは思い切って真正面から受けた方が断然マシな気がする。…ということで、日の出日の入り時は案外イケるんじゃねと思っている(←…そうか?)。

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f/8まで絞っているが画面右側、横からの太陽光で盛大なゴーストが出た例。こんなゴースト、どうしようもない。構図も天気もよかっただけに、後から気づいてめちゃくちゃガッカリした。フードもあまり頼りにならないので、手で光線を遮るとか、何かしらの工夫はしたほうがいいんだろうが、超広角だから画角に入らないように光を遮るのは至難の業だし、そもそも片手でボディ+レンズを持てるような重さでもないしなあ…。とりあえずゴーストは無視して、トキナーブルーと描写力を見て行ってくれ。

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それなりに絞ってやれば、PC画面上で見るくらいなら画質は問題なさそう。

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花撮り。開放はやっぱりピント面がちょっとソフトだ。バリバリシャープ!バキバキ解像!を求める人には向いてないのかもね。

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家の近くで。桜だってお手のもの。隅がちょっと気になるといえば気になる人もいるかも。

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前ボケテスト。桜ついでで+1.0EVのままだったので後から±0近辺まで露光量を下げた。開放はちょっとやりすぎ感。前ボケさせるなら前景はシンプルな方が好きかも。

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f/8まで絞るとこんな感じ。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 24mm 1/500秒 f/8 ISO100 
  • 北海道大空町 ひがしもこと芝桜公園

 手前の被写体にグッと寄ってあげるとダイナミックさが出る。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 16mm 1/800秒 f/8 ISO100 
  • 北海道大空町 ひがしもこと芝桜公園

ワイドに写せるスナップ的な使い方もできる。けど、もったいないよねえ。こんなデカいレンズでやることじゃないっすね。ええ。

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  • TOKINA AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX + D750
  • 24mm 1/800秒 f/8 ISO100 
  • 北海道大空町 ひがしもこと芝桜公園

ただ見たままに撮るだけでは、特に単調な風景はこのように「普通の画角の広いだけの写真」になってしまうので、工夫が必要。まあこれは24mmだけど、超広角域は経験と腕がモノを言う気がする。

 

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順光だと本当に素晴らしい写りをする。これはなかなか個人的には会心といったところ。鉄道写真にも使えるレンズだと思う。

 

総括

作例をご覧いただければなんとなくお分かりになるかと思うのだが、改めてまとめると、このレンズの弱点は以下の通りになる。

  • 逆光耐性の弱さ→強い光源を特定の方向から入れてしまうと、ほぼ確定でフレア+逆手にも取れそうにないほどのとても汚いゴーストが出る。太陽は基本的に画面内に入れてはいけない。正直真横に太陽のある構図も危険。作例にあげた通りH100のテールランプであの有様なので、何なら満月でさえちょっと厳しい。
  • 手ブレ補正がない→とはいえ同クラスレンズで手ブレ補正付きはタムロンだけ。広角域では(三脚使用も多いだろうし)あまり必要ない気がする。その分安いし壊れにくいと思えば良い。純正14-24/2.8Gにもないんだし。手ブレ補正に頼った撮影をするのもいかがなものかと小生は思っておる。
  • デカくて重い→レンズだけで約1kg。分かりきっていることではあるが気軽に持ち出せるレンズではない。スナップもできる実力はあるが、持ち出すかというと…。ただ同クラスのレンズは大体こんなもんだし、何よりこれで重いと音を上げているようでは大砲は永久に持てないだろう。

…と、明確な弱点はあるとはいえ、分かって撮っていれば何も問題はない。テレ端が28mmまであるのが個人的に嬉しく、撮影対象がこれだけで少し広がるので、ある程度付けっぱなしでウロウロしても心に余裕があった。この+4mmが効いていた。超広角にしては歪みも少ないと思う。D750との組み合わせではAFも速く、合焦で迷うこともなかったので、これよりハイクラスのボディならまず大丈夫。

めちゃくちゃに解像するというわけではないが、一応プロ向けということもあってコントラストが高く、色乗りも良好。また暗部までしっかり描写してくれる。ものすごく引き伸ばしたりしない限りは十分な性能だと感じた。特に晴れの日の順光では無類の強さである。あと結構寄れるので、テーブルフォトやスナップにも使えないこともない。なお上述の通り、実際やるかどうかは別。

 

中古品も程度のいいものが(比較的)安価に手に入るので、超広角域の入り口としてはこれを選んで良かったと思っている。コストパフォーマンスは最高クラスだ。特に晴天下の空のブルーの発色は本当に素晴らしいので、それだけでも十分に購入の動機になりうると感じた。

ただ、他の超広角大三元クラスにも言えることだが、購入にあたっては明確に「○○が撮りたいからこのレンズを買う」という目的意識が必要だと思う。ただ闇雲にスペック(…といってもこれは15年前の設計だけど)に惹かれて購入してしまっては、そのデカさと重さと汎用性の低さゆえ、防湿庫の肥やし行きになってしまうこと間違いなし。なお、自分の場合は摩周湖をこれでワイドに撮ってブルーを表現したいと思って買ったが、まだ行ってないね…。

活躍の場は風景写真がメインになると思うが、風景の主戦場の一つである「ガチ登山」に持っていくには重量、そして足場が悪いところで出目金を取り出す恐怖心…がめちゃくちゃネックになりそうだ。これと標準をもう1本…というのも(重量からして)むずかしいし。

作例に挙げたとおり鉄道写真での使用も可能だが、場面や構図は限られる。ホーム上で停車中に近づいて撮るか、もしくは風景中心にして列車がアクセントになるような構図なら活路を見出せそうだ。個人的には大駅の跨線橋の上からホーム全体を広く写してみたい。あぁ、言わずもがな、夜間はハイビーム一発でアウトである。というわけで、日中に限られそうであるが、こちらはこちらで太陽光にシビアなのでキツい。いずれにしても順光はマストだ。あと気のせいかもしれないが、曇りだと若干コントラストが落ちる気がする。

 

写真を撮るにあたって風景画をメインにしている方でなければ、超広角域自体が決して出番の多いレンジというわけではないので、自分に必要かどうかはしっかり吟味してから選びたいものである。クルマ移動がメインで、広大な自然の多い場所に住んでいる/よく遠征する方には、比較的出番が増えそうなのでオススメだ。平地から十勝の平原+日高山脈とか、国道横の駐車スペースから空と湖の広がりを撮るとか、砂浜+海+空をワイドに捉えるとか。エサヌカ線やオロロンラインのような、果てしなく続く直線道路を撮るのも良さそうだね。つまるところ超広角というものは、北海道が一番出番がありそうだ、という結論にしておこう。

(それはそうと、他の方のレビューも読みつつ、現行のopera 16-28mm F2.8 FFの作例を見ていたんだけれど、さらに写りが良くなって逆光にもかなり強くなった印象を受けたので、いつかこれを下取りに出して買い換えようかなあ…(などと供述しており))

 

最終更新:2024/09/01