【23:30 日吉駅】
夏休みだというのに相変わらず若者だらけだ。
こいつらいつも日吉にいるんだな。
あるものは騒ぎ、あるものは談笑し、あるものはアサヒス-パ-ドゥラァァイを片手に焦点の合わない目をしていた。
流石に銀玉に登る輩は、今日はいない。
バカだなあ、とこいつらを見るといつも思う。
だけど、こいつらはそんな僕のことなんか気にも留めていないようだった。
こいつらはこいつらなりに、今を最高に楽しんでいるんだろう。
おそらく、彼らの価値観が僕とわかり合うことはない。
ゴキブリが残飯に群がっていた。
こいつらもどこにでもいるんだな。
未成年飲酒の輩の喧騒を離れ、一服する。口直しだ。
【24:10 武蔵小杉駅】
東横線ホームで吐いてる女がいた。多分同年代。
脇には介抱してる女。
駅のホームに水道なんてあったんだなあ。知らなかった。日吉に通ってた頃は毎日通ってたのに。
なんで水道なんか付いてるんだろう。
酔っ払いのための設備としか思えない。
さっきとは打って変わってサラリーマンであふれる。
どうやら南武線立川方面以外は終電も終わってしまったらしい。
やれやれ、横浜方面に行くには東横線に課金するしかなさそうだ。
終電を逃した酔いどれたち。
中には駅の改札前で寝る事を決意したものもいる。
流石に追い出されるんじゃないのかなあ。
武蔵小杉の様な成金の集う街にもホームレスはいる。
そんないびつな構造が逆に面白い。
横浜行きの東横線に乗り込む。
横浜行きなんてあったんだなあ。日中は全部元町中華街まで行っちゃうからね。
綱島から乗り込んだ女子大生は酒に酔っているのか、早々に隣の中年サラリーマンにもたれかかって寝入ってしまった。
このサラリーマン、何を思う。
【24:30 横浜駅】
西口から外へ出る。
いろんな人間が跋扈している。
野外カラオケをしてる奴がいた。お世辞にも上手いとはいえない。
ただ、彼は今最高に自分に酔っているのである。
もうすこしだけ夢みさせてあげよう。
繁華街の方へ進むと治安が一気に悪化する。
居酒屋のキャッチに不良、チンピラ。
あまり1人では歩きたくない場所だし、時間帯だ。
こいつらは皆、自分に自信がありげに見える。
一体どこからそんな自信が湧いてくるのか。
僕に教えて欲しい。
酒に酔った男女が互いにもたれ合い、ふらつきながら歩く。
あっちにも、こっちにも、そんなのばかりだ。
大抵、女が酔っ払っている。あざとい目をしている(ちなみに僕はこういうのに弱い)。
男はまるで、このあと間違いなく起こるであろう出来事に期待しているかのような、不敵な笑み。
もう、終電はなくなってしまった。
「終電、無くなっちゃったね…」そんな会話でもしてるんだろうか。
そんな彼らの行き着く場所とは。横浜という街である。しかも金曜の夜。
答えは、もう、ひとつしかない。
この街のあちこちで、あるものは純愛によって、あるものは一夜限りの関係で、抱かれるのだと思うと、ひとりこれからマクドナルドで夜を明かそうとしている自分が情けなくなってくる。
入店すると日本の下層社会が広がっていた。
薄汚れたジジイが寝転がっていた。
こいつは自分がこんな人生になるだなんて予想してたのだろうか。
もっと華やかな…いや、華やかでなくてもいい。もっと幸福度の高い人生を歩みたいと思ってたんじゃなかろうか。
それとひきかえ、この現実をどう思うのだろうか。
このジジイは夢見てんのかな。
目覚めたら、また現実の酷さに絶望して一日が始まるのか。
醜いことにも、僕は僕がこの薄汚れたジジイで無いという事実に安堵したのであった。
ということで、普段とは雰囲気の違うものを書いてみました。
こういうの楽しいんですけどなかなか書けないです()
では。